設立趣旨書

 

1趣旨

 

 子どもが長期入院をする際、ほとんどの病院では家族が一緒に寝泊まりして24時間体制でその子に付き添うことを求めます。子どもの入院治療には、治療以外の時間にも成長・発達の時間があり、身の回りのお世話や見守り、日々細やかに愛情をもってかかわる養育者が必要だからです。そして何より、子どもの治療が順調に進むためにも、子ども自身の心の安定が必要で、そのためには家族の存在が必要だからです。しかし病院は、患者である子どもの治療をする場であるため、子どもに付き添う家族には寝食の用意がありません。子どもの難病の入院治療は数ヶ月~数年におよびます。治療をする子どもと付き添い家族にとって、病院は生活の場そのものとなります。

 にもかかわらず、現状、付き添い家族の生活の場としては、かなり厳しいものであるとわたしたちは考えています。たとえば、付き添い家族が自分の食事のために病院内で自由に使えるのは、電子レンジ、トースター、熱湯のみというのが一般的です。この設備で可能なのは、レトルト食品やカップ麺、冷凍食品やコンビニ弁当です。これで数か月間、1年以上、毎日の三食をまかなうことになります。加えて、コロナ禍で外出制限がさらに強化されたため、これ以外の選択肢がないのが実情です。問題は食だけでなく、寝床は幅が75cmほどの簡易ベッドを用意して寝ている方がほとんどで、病児が乳幼児の場合は、ひとつのベッドで添い寝をしています。

 日中容態を見守るために常に子どものそばにいて、シャワーや買い物といった最低限のことをする時間も十分にはとれないのが常態化しています。このような生活で、付き添い家族が体調を崩すケースも多くあります。家族が倒れてそばにいられなくなる事態は、病気治療と向き合う子どもにとっては大変なダメージです。

 この現状を根本的に解決すること、それが子どもの笑顔につながります。その解決のために、わたしたちは、これらの問題点を院外から可能な範囲でサポートし解消したいと考えています。病児とその家族が病気治療以外の面でストレスなく穏やかに笑顔で過ごせる時間が増えるようにサポートします。

 特に、小児病棟の医療スタッフや病棟内における医療以外のサポートスタッフの充実を図ることは急務であると考えています。それは病児とその家族だけの幸せではなく、医療関係者、病児を取り巻くすべての関係者の幸せにつながることでもあると信じています。

 さらに、入院治療後の生活においても、病児とその家族、医療的ケア児とその家族が孤立することなく、社会とつながりが持てる機会をつくり、互いを繋げる役目を担います。垣根を越えた関わりは、ひいては誰もが一人ひとりかけがえのない存在であると認め合い、多様な人がともに過ごすことが当たり前であると実感できる環境にもつながると考えています。

 これらの問題点を解消するため「病児とその家族の生活支援事業」をはじめとした事業を行い、病児とその家族が入院生活および社会生活を健やかに送るための環境づくりを行います。

 法人名であるイナンクルという名称は、アイヌ語で「幸あれ」という意味です。幸あれ、誰もがその人なりの、その家族なりの幸せを感じられるように願いを込めました。

 この事業は医療機関、企業、行政と連携する必要があることも多く、社会的信用を得る必要があり法人格を取得したいと考えます。

 この法人は、札幌市内および北海道内の病児とその家族はもとより広く市民を対象として、病児の入院付き添い中は付き添い家族を中心にサポートし、病児の退院後は治療を受けながら生活するのに他の市民と分け隔てなく共生できる地域社会になるよう、行政や各関係機関と連携し、そのために必要な環境を整備する事業を行い、地域福祉の増進に寄与することを目的とします。

 

2申請に至るまでの経過

  

2020年12月 「長期入院の子どもと付き添い家族を支える会」発足。支援金の募集開始。

2021年2月 北海道大学病院小児病棟に無添加レトルト食品とフリーズドライ食品の差し入れ

2021年3月 北海道立子ども総合医療・療育センターこどもっくるに無添加レトルト食品とフリーズドライ食品の差し入れ

2021年4月 札幌北楡病院小児病棟に無添加レトルト食品とフリーズドライ食品の差し入れ

2021年5月 北海道大学病院小児病棟に、市内こだわり飲食店による手づくりお弁当とパンの配達開始、現在も継続中。

2021年6月 北海道大学病院小児病棟に無添加レトルト食品とフリーズドライ品の差し入れ

2021年7月 北海道立子ども総合医療・療育センターこどもっくるに無添加レトルト食品とフリーズドライ食品の差し入れ

2021年11月 患児退院後、または一時退院時、付き添い家族向けのココロとカラダのリフレッシュケアサポート開始。

 

2022年2月設立発起人会を長期入院の子どもと付き添い家族を支える会事務所とオンラインにて開催し、業計画や予算について協議を行い、2022年2月25日に総会を開催し、設立の運びとなる。

 

2022年3月1日 

特定非営利活動法人イナンクル

 

設立代表者住所 札幌市西区八軒2条東5丁目6番19号

氏名 綿谷千春